医療機関におけるペネトレーションテストの重要性|ランサムウェア被害を防ぐ

目次
近年、日本全国の病院や医療機関において、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)による甚大なサイバー攻撃被害が相次いでいます。電子カルテシステムが暗号化されて利用できなくなり、救急患者の受け入れ停止や手術の延期といった医療崩壊に直結する深刻な事態に発展するケースも珍しくありません。
「うちは地方の小さな病院だから狙われないだろう」「閉域網(クローズドネットワーク)だから安全」という過去の常識は通用しなくなっています。
本記事では、医療機関がサイバー攻撃の標的にされやすい理由と、被害を未然に防ぐための「医療機関向けペネトレーションテスト」の重要性・具体的なアピール手法について専門家の視点で解説します。
1. なぜ医療機関がランサムウェアに狙われるのか?
攻撃者(ハッカー組織)は利益を最大化するため、以下の理由から医療分野を優先的なターゲットとしています。

① データの「命の重さ」と「身代金の支払い確率」の高さ
医療機関が扱う電子カルテや患者情報は、停止すれば直接的に「人命に関わる」ため、早期復旧へのプレッシャーが非常に高くなります。攻撃者は「人質としてこれ以上ない強力なカード」であることを熟知しており、身代金の支払いに応じる確率が高いと足元を見ています。
② クローズドネットワーク(閉域網)への過信
「電子カルテ系ネットワークはインターネットから切り離されているから安全」という思い込みが院内に蔓延しているケースが多々あります。しかし実際には、外部の保守ベンダー(保守業者)用のリモートアクセスVPN機器の脆弱性が放置されていたり、USBメモリ経由での感染など、完全な閉域は存在しません。
③ レガシーシステムと複雑なネットワーク構造
医療機器(MRI等のPC端末など)は、専用OSや古いWindows(サポート切れ)のままアップデートできずに稼働していることがよくあります。これらの脆弱な端末がネットワーク内に一つでも存在すると、そこを足場(踏み台)にして院内全体へ被害が拡大します。
2. 医療機関特有のネットワーク構成とその弱点
厚生労働省のガイドライン等に基づき、多くの医療機関は「3省2ガイドライン」などを参考に、ネットワークを論理的・物理的に分離しています(HIS系、PACS系、情報系など)。
しかし、実際のペネトレーションテストを実施すると、以下のような「分離の抜け穴」が頻繁に発見されます。
- 保守用VPNルーターのパッチ未適用: ここ数年の医療機関ランサムウェア被害の「侵入経路トップ」です。Fortinet等のVPN機器の脆弱性を突き、正規の保守ベンダーの顔をして内部ネットワークに侵入されます。
- Active Directory (AD) のドメイン統合と権限設定ミス: 認証基盤であるADが乗っ取られると、切り離されているはずの電子カルテも一元的に制御が奪われ、全端末が同時にランサムウェアで暗号化されてしまいます。
3. 医療機関向けペネトレーションテストの具体的な手法
「セキュリティ診断PLUS」では、医療機関の実際の稼働環境に配慮しながら、攻撃者の視点で侵入が可能かを厳格にテストします。
フェーズ1:外部からの侵入経路の特定(ペリメーターテスト)
- インターネット上に公開されている病院のWebサイトや、職員用のWebポータル、VPN機器に既知の脆弱性や設定ミスがないかをスキャン・手動検証します。
フェーズ2:内部ネットワークの侵害と横展開(Lateral Movement)
- 万が一、メールの添付ファイルなどを通じて「院内の一部のPC」がマルウェアに感染したと仮定します。
- その端末から、医療情報システム(電子カルテサーバーなど)へアクセスし、ランサムウェアをばら撒くことができるか(横展開・権限昇格が可能か)をホワイトハッカーが手動で検証します。
フェーズ3:サプライチェーン(保守業者)の経路確認
- 保守ベンダー用のリモート接続環境が、適正な認証(多要素認証など)で保護されているか、不要なポートが開いていないかの監査を行います。
4. テストは業務に影響を与えないか?
医療の現場における最大の懸念は「セキュリティテストによってシステムがダウンしたり、診療業務に影響が出ないか」という点です。
当社では事前の綿密なヒアリングを行い、MRIやCTといったセンシティブな医療機器に対して高負荷なスキャンを直接かけることは行いません。 業務影響を最小限に抑えつつ、システムの「構成上の弱点」や「ADの権限設定の隙」を突く、安全かつ非破壊的なアプローチで診断を行います。
まとめ:ガイドライン遵守から「実際の防御力」の証明へ
厚生労働省の各種ガイドラインを満たしている(チェックリストに〇をつけた)だけでは、高度化する凶悪なランサムウェアの攻撃は防げません。
「本当に今のネットワーク構成で、ランサムウェアの侵入と拡大を防げるのか?」——その事実確認として、攻撃者の視点で行うペネトレーションテストが最も確実な「防御力の証明」となります。
ネットワーク・ペネトレーションテスト を通じて、「どこから直せば最も効果的か」をご提案いたします。情報セキュリティの専任担当者がいらっしゃらない医療法人様でも、報告会等のサポート体制を準備しておりますので、手遅れになる前にご相談ください。
よくあるご質問 (FAQ)
Q. 医療機関向けのガイドライン(厚生労働省等)に対応したレポートは可能ですか?
A. はい、可能です。弊社から提出する診断報告書は、ガイドラインで求められる「脆弱性への対応・対策」の実施証明(エビデンス)として、監査等への提出資料にそのままご活用いただけます。
Q. 電子カルテのシステムベンダーがセキュリティテストに難色を示しています。
A. 医療業界ではよくあるケースです。「自社システムの動作保証ができない」というベンダー側の懸念に対し、事前にテスト手法や対象(非破壊的なテストであること)を説明し、ベンダーを交えた三者間での合意形成サポートも当社にて行います。
Q. VPNからの侵入ルートだけを診断してもらうことはできますか?
A. はい、可能です。最もリスクの高い「外部公開接点(VPNルーター等)」のみを絞り込んで診断するスポットプランもご用意しておりますので、ご予算に合わせて最適なテスト範囲をご提案いたします。
